「お兄さん、キャバクラどうすか?」
「このあとお遊びのほうは?」
「かわいい女の子揃ってますよ!」
都会のネオン街を歩いていると、いつも待ち伏せる常套句。
キャバクラの勧誘もそのひとつだ。
大抵、
「未成年っす!」
「麻雀しに行くんで..」
と対処しながら、これまでの東京の夜を切り抜けてきた。
だが、恵比寿の飲屋街だけはこの対処法では不十分だった。
キャッチがこちらに近付いたとき、
まさかいきなり、
Janne da arcのHEAVENのサビを熱唱されるとは想定できなかったからだ。
そのキャッチの男とは、ほぼ毎日顔を合わせる。大体、いる。
今日も帰りに会った。
なぜか、一応、軽く頭を下げてしまった。
推定20代前半。
秋まではスーツだったが、今はその上に毎日モッズコートを着ている。身長は165cmくらい。髪の毛は3回ほどハイブリーチしたくらいの明るさ。フォルムはマッシュな感じだが、別にパーマもスタイリング剤も施していない模様。
目はパッチリしているが、目力が強いわけではなく、いつもどこか遠くを見ているような、不思議な雰囲気が漂っていた。
そして、とにかく眉毛が黒い。
白い髪の毛と黒い眉毛のコントラストが印象的だ。
そんな彼が急に
「き〜っと生まれ変〜わったって〜同〜じ場っ所〜で♪き〜っと君を見〜つ〜け〜て〜あげ〜るよ〜♪」
って歌いながらこちらに近づいてくるから驚く。しかも、なかなかの無表情。
だけど、さすがにこれを全スルーするわけにはいかなかった。これだけ体を張って見込み客にアプローチする男はなかなかいないだろう。
だから立ち止まって
「えっと、はい?w」
と言い、その男と会話をする意思をほんの少しアピールしてみた。
するとその男は、
ただ会釈をし、どこかへ行ってしまった。
いや、キャッチして!
無視って。周囲の道行く人々はこちらをチラチラ見ているが、明らかに「俺がシカトされている図」がそこにはできあがっていた。してよ、キャッチ。オチも、ないし。
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